2016 年 33 巻 3 号 p. 484-487
Ara–Aの使用後に脳症を発症した3症例を提示し,発症の要因について検討した.症例は80~90歳台の女性である.帯状疱疹に対して標準投与量のAra–A静脈内投与が行われた後に全例で意識障害,2例で振戦が認められた.髄液検査ではわずかな細胞増多以外の異常所見は認めず,脳波では全例でび漫性徐波を認め,頭部MRIで異常所見は認めなかった.3症例の共通点は血中薬物濃度の上昇に関わる異常を認めたことである.すなわち高齢,症例1では腎機能の低下(eGFR 32.6 ml/min/1.73m2),症例2では著明なるい痩(BMI 15.9),症例3では腎機能の低下(eGFR 7.4 ml/min/1.73m2)及び尿酸生成抑制薬併用である.今後Ara–Aを使用する際には,薬物の血中濃度を上昇させる要素がないか注意深く確認する必要があると考えられた.またvidarabine代謝産物である9–β–d–arabinofuranosyl hypoxanthine(Ara–HX)の測定が可能だった例では著明な高値が認められ,Ara–A脳症発症のマーカーである可能性が示唆された.