神経治療学
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総説
せん妄/高齢者における脳症 ―神経老年学的アプローチ―
榊原 隆次澤井 摂桂川 修一水野 裕仁長尾 考晃根本 匡章
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2022 年 39 巻 3 号 p. 412-416

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抄録

せん妄は,急性の認知機能の低下と意識の低下が同時にみられるもので,不穏・行動異常をしばしば伴う.せん妄は,歩行障害を同時に伴うことが非常に多い.基礎に加齢性脳疾患(Alzheimer病+白質型多発性脳梗塞,またはLewy小体型認知症,アルコール(中毒)症に伴う認知症など)に伴う認知症・歩行障害がある高齢者に,a)急性の頭蓋内病変,または b)急性の全身疾患が重畳することで起きることが多く,a)とb)の比率は15% : 85%とも言われ,後者が多い.後者の代表的なものである誤嚥性肺炎・手術後などによる全身炎症に伴う脳症は,末梢のTNF alpha等のサイトカインが,血液脳関門を通過し,神経障害を起こすことが推察されている.せん妄患者をみた際,加齢性脳疾患,急性の頭蓋内または全身疾患を,できるだけ同時に評価し,治療ケアを行うと良いと思われる.さらに,これらを考慮した発症前の,せん妄ハイリスク患者の予防ケアも望まれる.

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© 2022 日本神経治療学会
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