日本ニュージーランド学会誌
Online ISSN : 2432-2733
Print ISSN : 1883-9304
『ニュージーランドの上院』
陶山 宣明
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2017 年 24 巻 p. 16-23

詳細
抄録

世界の主要先進国はほぼどの国も二院制だが、ニュージーランドは一 院制である。ニュー ジーランド議会は二院制で始まったのに、シドニー ・ ホランド国民党政府が1951 年に上院 を廃止した。 上院は首相によって選ばれていたため、ご都合主義がはびこり、政権の座に ある政党に功績があって、政府法案に波風を立てそうにない政治家を選ぶ傾向が強まって いた。 最初に想定されていた、下院から上がってきた法案に長く培った専門を駆使して、 建設的な修正を加える機能をとても果たさなくなっていた。 政党政治が根付いていなかっ た頃には、 上院議員が本来の役割を果たせる可能性も高かったはずであるが、 締め付けの きつい政党が政治の中心に居座わるようになると、上院議員も、下院議員と同様に、政党 で決めたことに背くのは命取りである。 一度任命されたら終身安泰だった頃はともかくと して、7 年経てばポストを離れるようになってからは、再び同じ政党の首相に任命しても らうためには、自分の所属政党に逆らう行為は賢くない。 むしろ何も積極的なことはせず に、自らの政党が出す政府法案が無事通ることを良きに計らうのが安全な策である。7 年 後に違う政党が政権にある場合、 自分の政党が政権復帰するのを待つ必要がある。 いずれ にせよ、そうした上院の価値を否定して上院は廃止されたが、最近では上院を復活するか あちこちで話し合いの場が持たれている。 しかし、21 世紀に上院が復帰して、ニュージー ランドが二院制に戻る可能性は極めて小さい。

著者関連情報
© 2017 日本ニュージーランド学会
前の記事 次の記事
feedback
Top