抄録
近年,幹細胞は再生医療の研究において注目されており,歯科領域においてはヒト歯髄,特にヒト乳歯歯髄などの組織に存在している.しかし,ヒト歯髄組織に含まれる幹細胞の量は極めて少ない.glycogen synthase kinase-3(GSK-3)に特異的な阻害剤である6-bromoindirubin-3'-oxime(BIO)は,ヒトやマウスES細胞において未分化能を維持できる薬剤として知られている.しかし,このBIOをヒト乳歯歯髄由来細胞に用いた報告はない.乳歯歯髄細胞を臨床応用するためには,未分化能を維持することが必要であると考える.そこで今回,BIOの乳歯歯髄由来細胞における未分化能への影響について検討を行った.乳歯歯髄由来細胞は,う蝕のない乳歯から組織を採取した.0.5-1.5μM BIOでは乳歯歯髄由来細胞に与える影響がわずかであった.リアルタイムRT-PCRによる検索によると,1.0-1.5μM BIOでOct3/4,Sox2遺伝子発現が有意に増強し,一方,c-Myc遺伝子発現はすべての濃度で有意に減少した.さらにフローサイトメトリーでは,1.0μM BIOにおいてCD44,CD90発現が有意に増加した.以上より,乳歯歯髄由来細胞の未分化能の維持には1.0μM BIOが最適であることが明らかとなった.