抄録
Osteopontin (OPN) は, 当初, 分泌性の骨基質蛋白質として同定された.しかし, 最近, 細胞遊走, 免疫作用, 腫瘍細胞の転移能などにも深く関与することが明らかにされている.われわれは, 線維芽細胞, 活性化マクロファージ, 転移性の乳癌株化細胞, 単離破骨細胞においてOPNおよびCD44が共局在すること, さらに, これらの分子は複合体を形成することにより, その機能を果たしていることを今までに報告してきた.本研究では, 骨髄由来monocyteをM-CSF, RANKL共存下で培養し, 融合過程にある破骨細胞前駆細胞 (培養3日目) と成熟破骨細胞 (培養6日目) のそれぞれについて, 免疫蛍光染色法を用いてOPN, CD44およびactinの局在性を検討した.その結果, 融合過程にある破骨細胞では細胞突起部分にOPN, CD44およびactinが強く発現され, 2重染色像から, これらの分子は相互に共局在することが示された.
一方, actin ringを形成している成熟破骨細胞ではOPN, CD44の染色性は減弱し, actinとの共局在は全く観察されなかった.次に, OPNの機能について検討するために, OPN遺伝子欠損マウス (OPN-/-) 由来の線維芽細胞を用いて, CD44とそのligandであるhyaluronan (HA) の結合についてbeadbinding assayを行った.その結果, HAでコーティングしたビーズを用いた場合, OPN-/-では結合活性がBSAビーズと同等のレベルまで低下し (OPN+/+の16.6%) , OPN+/+との間には有意差が認められた (p<0.001) .一方, BSA, fibronectinではOPN-/-とOPN+/+との間には有意差はなかった.以上の結果から, OPNはCD44と共同して働き, 細胞骨格制御を介して細胞遊走, 細胞融合あるいは細胞接着に重要な役割を果たしている可能性が示された.