体力科学
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都市生活者の運動能力の特性
―中高年者の運動能力を中心として―
名取 礼二倉田 博
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1973 年 22 巻 4 号 p. 148-156

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抄録

都市生活者とくに中高年者において腰脚力の低下が留意されるため, 腰脚力を中心にして, 簡易な筋力測定法を考案し, その検討をおこなった。
腰の捩り力, 台上に片足をかけて昇台する際の高さの限界, 台上に片足で立ち膝を屈げ乍ら他足を後下方に降ろす場合の下降限界, 椅座位から上肢を利用することなく立上る場合の椅子の高さと上半身の前傾との関係, 体重の80%の負荷を片脚で支えたときの耐久時間, 立位あるいは椅座位で踵部を接地し, 爪先を上げる場合の最大張力等を指標にして中高年者の筋力減退の様相を検索し, またこれら指標の一部を利用し毎日の練習によって脚力等の増強が中高年者でも容易に生じることを示した。
以上の諸検査の基礎事項の一つとして, 筋力指標の特性について1, 2の検討を試みた。握力, 腕力等について張力時間曲線を求めたところ, 最大張力をPmax, 任意の時点の張力をPとした場合に (Pmax-P) を縦軸に時間tのlogを横軸にとると張力曲線が3つの直線部分として表わしうることを見出した。したがってこの様な解析が筋力発揮の特徴を知る上で便と思われる。持久力の指標として30秒間の持久力曲線から5分間のそれを予期できるかどうかをしらべた。持続的収縮の場合には一意的な予知ができないが, 反復収縮を対象にすれば, 初期張力減衰のやや小さい中高年者では一応30秒持久力値を持久筋力の指標になしうることを認めた。
この報告は文部省科学研究補助金による総合研究日本人の体力づくりの環境生理学的研究 (研究班長白井伊三郎教授) の分担研究である。

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© 日本体力医学会
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