1) 運動選手の瞬発握力発揮時の張力を, 名取の方法により分析し, 非鍛錬者のそれと比較し, 年令別, 運動種目別に検討し, さらに測定方法に検討を加えた。
2) 被検者は17才から26才までの運動選手71名, および対照群として運動選手でない17才から30才までの健康な男子54名が無作為に選ばれた。運動選手のうち高校生は, 相撲, 柔道, 剣道, 野球部員であり, 大学生は, ハンドボール, ラグビー, 体操部員であった。また一般成人は, 警察柔道および剣道部員であった。
3) 運動選手の加令にともなうPmax.の変化は, ほぼ20才になるとplateauに達するのを認めた。対照群では20才以降も漸増の経過を示した。
4) 運動選手のtanψ, tanθはいつれも, 対照群より大きく, 瞬発筋力発揮時の実効が大であることを認めた。
5) 瞬発筋力発揮時の実効を必要とする運動種目は, 剣道, 柔道で, 瞬発筋力の実効を必要としない種目は, 体操であろう。またハンドボールは, Pmax.が大きいことは必要であるが, 瞬発筋力の実効は, 剣道, 柔道ほど必要でない種目であるように推定された。
6) 非鍛錬者および高校生の運動選手群では, Pmax.の大きいとき, tanψ, tanθも大きい傾向を示したが, 大学生, 一般成人の運動部員では, このような傾向はみられず, 運動種目によりPmax.の増加のしかた, tan φの増加のしかたが異るように推定された。