体力科学
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運動に対する心拍数, 血圧, 呼吸数の反応の年齢別, 性別特性に関する研究
佐藤 佑石河 利寛青木 純一郎清水 達雄前嶋 孝
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1977 年 26 巻 4 号 p. 165-176

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抄録

思春期前期, 思春期, 青年期, 壮年期の男女126名に, 体重あたり負荷が等しい3種類のbicycle ergometer運動を行なわせ, その時の心拍数, 血圧, 呼吸数の変化から運動に対する循環機能の年齢別, 性別反応の特徴を検討し次の結果を得た。
1) 心拍数は中等度以上の運動では指数関数的に増加した。また運動強度と心拍数は直線関係にあった。年齢的特徴として, 男子の運動時心拍数は加齢とともに減少する安静時心拍数に比例して, 若年で高く青年・壮年で低くなったが, 強い運動時における壮年の心拍数は一段と高くなった。女子の安静時心拍数は, 男子と同様に年齢とともに減少したが, 同一運動による心拍数は, 男子に比較して大きく増加した。
2) 心拍数の立ち上がりは若年で早く, 壮年で遅延する傾向にあった。これは運動終末心拍数を140拍/分に統一した時のtime courseである推定心拍数曲線からも明瞭に認められた。
3) 収縮期血圧や脈圧は, いずれの年齢層においても運動強度とともに増加した。とくに壮年男子の運動時の血圧反応は, 若年に比較して大きかった。すなわち安静時の収縮期血圧, 脈圧は加齢とともに増加したが, 運動による反応も若年は小さく, 年齢とともに大きくなり, 壮年は最も大きかった。脈圧の増大は弛緩期血圧の低下より収縮期血圧の増加にもとつくものであった。女子も同様にいずれの年齢層でも運動強度とともに収縮期血圧, 脈圧は増加したが, とくに男子と異なり壮年の増加は小さく, また最強度の運動時血圧はあまり増加しなかった。
4) 呼吸数は運動により急激に増加し, 運動後も速やかに安静値に戻った。またいずれの年層においても運動強度の増加とともに呼吸数は増加した。安静時呼吸数は, 男女ともに若年から壮年にかけて加齢とともに減少しているが, 運動による呼吸数の増加も若年で多く, 壮年で少なかった。運動時呼吸数の性差について, 女子は軽運動で男子の中等度運動に相当する増加を示し, 最強度の運動時呼吸数は一段と増加した。
5) 心拍数, 血圧, 呼吸数の3指標間で, とくに若年において心拍数と血圧の間に高い相関が認められ, 運動時の循環機能における心拍数の重要性が強く認識された。

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