体力科学
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環境温が持久性運動時の体温調節に及ぼす影響
―個人差に着目して―
近藤 徳彦池上 晴夫
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1986 年 35 巻 5 号 p. 229-240

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抄録

健康な男子学生7名について, 気温15℃ (相対湿度70%) , 25℃ (55%) 及び35℃ (45%) の3種の環境下で60%VO2maxの自転車運動を60分間行わせ, その時の直腸温の変化をもとに運動時の体温調節能力差を検討した.測定項目は, HR, VO2, 換気量, 直腸温 (Tre) , 平均皮膚温 (Tsk) , 肩甲部の局所発汗量 (MSR) 及び総発汗量であり, またこれらの結果から体熱バランス式を用いて蒸発による熱放散量, 放射・対流による熱放散量及び有効発汗量を算出した.得られた結果は以下の通りであった.
1.運動終了時のTre (平均値) は, 15℃と25℃の環境下ではほぼ等しく, 35℃の環境下で他の場合より有意に高かった.
2.運動終了時の平均皮膚温の上昇度 (△Tsk) と有効発汗量 (Kcal/m2) の間に有意な正の相関関係が得られた.
3.60%VO2maxと相対強度を等しくしたにもかかわらず, 各環境下で直腸温の上昇度 (△Tre) にかなり大きい個人差が認められた.
4.これらの個人差をもたらす原因について局所発汗量 (MSR) と平均皮膚温 (△Tsk) を中心に検討した結果, 15℃と25℃の環境下でTre上昇が著しい者は, △Tskの上昇が軽度であるかあるいは逆に低下していること, また, 35℃の環境下でTreの上昇が著しい者は, △Tskの上昇及びMSRの値も小さく, Tre-MSRよりみた発汗性の体温調節能が劣っているものと推察された.

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