体力科学
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最大有酸素性パワーと等速性筋出力の持続能力との関係
根本 勇金久 博昭福永 哲夫角田 直也下敷領 光一吉岡 伸彦宮下 充正
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1988 年 37 巻 1 号 p. 77-84

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抄録
本研究では, 最大有酸素パワーと等速性筋出力の持続能力との関係について検討することを目的として, 除脂肪体重 (LBM) 当たり最大酸素摂取量 (VO2max) の異なるスピード・スケート選手群間 (HI群, n=19とLO群, n=20) のピーク・フォースの低下推移の比較から検討した.筋持久力テストは, CybexIIを用い運動速度を180度・秒-1として最大努力の脚伸展を連続50回行わせて実施した.その結果, 以下のことが明らかにされた.
1.被検者の形態, 身体組成および大腿部を構成する組織の断面積には, 皮下脂肪厚を除き両群間に有意な差は認められなかった.
2.VO2maxは, HI群の3.93l・min-1 (67.3ml・kg LBM-1・min-1) に対しLO群では3.59l・min-1 (59.9ml・kg LBM-1・min-1) であって両群間に有意差が認められた.
3.筋持久力テストにおけるピーク・フォースの初期値はほぼ同様の値であったが, 終末値ではHI群が高い値を示し, 特に伸筋断面積当たりの値では両群間に有意差が認められた.
4.脚伸展回数の進行に伴うピーク・フオースの低下推移は, 運動開始から30回ごろまでは両群間に差がないが, 30回目以降においてHI群が伸筋断面積当たりの筋出力と%ピーク・フォース (%) において有意に高い値を示した.
5.VO2max・LBM-1と筋出力の低下率との間には, r=-0.37 (p<0.05) の有意な相関関係が認められた.
以上の結果は, 短時間の最大努力という条件下における筋疲労の発現が最大有酸素性パワーによって間接的に影響されることを示唆するとともに, 呼吸循環系の調節と骨格筋の代謝特性との間に生理学的に密接な関連があることを示唆する結果であった.さらに, 本研究の結果は, 筋の作業能力の規定因子としての酸素供給能力の重要性を示唆した先行研究の結果を支持するものであった.
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© 日本体力医学会
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