体力科学
Online ISSN : 1881-4751
Print ISSN : 0039-906X
ISSN-L : 0039-906X
競技シーズン中のより多くの蛋白質摂取が身体組成と身体諸機能へ及ぼす効果―大学投擲選手の場合―
松岡 弘記古田 弘北川 薫
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 40 巻 2 号 p. 219-226

詳細
抄録
大学陸上投擲選手を対象にし, 日頃のトレーニング期における蛋白質摂取量 (B群: 1.5g・kg-1・d-1) とその摂取量よりも蛋白質を増加した場合 (A群: 2.1g・kg-1・d-1) とにおける62日間の栄養管理下の蛋白質摂取量の違いが, 身体組成と身体諸機能へ及ぼす効果を検討した.その結果は以下のようである.
1) 62日間の平均1日当りのエネルギー摂取量はA群3824kcal, B群は3441kcalであり, 蛋白質摂取量はA群2.0g・kg-1., B群は1.5g・kg-1となり, ビタミン・ミネラル類はRDAを十分に充足した.
2) 62日間の献立食摂取により両群の体重, %fat, Fat, LBWはいずれも有意な変化を示さなかった.また, MRIによる大腿部および腹部のそれぞれ脂肪と脂肪以外の断面積についても両群ともそれぞれ有意な変化はなかった.
3) 血液成分では, 両群とも有意に変化した項目があったが, いずれも正常範囲内の変化であり, 両群とも貧血症状はみられなかった.また, 尿中尿素窒素量は両群とも有意な変化を示さなかった.
4) 最大等尺性収縮による握力, 腕伸展九腕屈曲力, 脚伸展力, 脚屈曲力は両群とも有意な変化を示さなかった.
以上のように, 本研究の陸上投擲選手がトレーニング期に蛋白質の摂取量を, 日頃摂取している1.5g・kg-1・d-1から2.0g・kg-1・d-1へと62日間にわたって増加させ摂取したのであったが, LBWや筋力は増加しなかった.このことから, わが国でスポーツ競技者の蛋白質所要量として推奨されている2.0g・kg-1・d-1は, 少なくとも本研究の陸上競技投擲選手のLBWと筋力の増加には有効ではないことが明らかとなった.また, 貧血を生じさせない蛋白質摂取量は2.0g・kg-1・d-1以下でも十分であることがわかった.
著者関連情報
© 日本体力医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top