体力科学
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一流女子長距離ランナーの身体組成と体型
満園 良一小宮 秀一丸山 敦夫
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1994 年 43 巻 5 号 p. 334-342

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抄録

本研究は, 走トレーニングと走パフォーマンスが高水準にある一流女子長距離ランナー (n=9) の身体組成を体水分量法によって明らかにし, 規則的に運動していない一般学生 (n=10) との比較で体型と身体組成の関係をともに検討した.
結果は, 以下のように要約される.
1) 長距離ランナーの皮下脂肪厚は, 一般学生のものより14部位すべてにおいて薄く, 有意な差であった.
2) 長距離ランナーのSF (4.1±1.6kg & 8.6±2.8%) は, 一般学生のSF (9.4±3.0kg & 17.2±3.8%) より有意に少なく, 約半分の低値を示した.
3) 長距離ランナーのIF (7.2±2.0kg & 15.5±3.5%) は, 一般学生のIF (8.2±1.5kg&15.4±2.2%) より少ない傾向を示したが, 有意な差ではなかった.
4) 長距離ランナーのFat Mass (11.3±3.1kg) , %Fat (24.1±4.7%) は, 一般学生 (17.6±4.2kg&32.6±5.2%) のものより有意に低い値であった.また, 最も高い走パフォーマンス (マラソン; 2゜29′57″) を有するランナーが, %Fatの最小値17.6%0を示した.
5) 長距離ランナーの体型は, 中胚葉性内胚葉型 (4.65-3.68-2.10) を示す一般学生に対して, 第3要因得点が最も高い典型的な外胚葉型 (2.35-2.32-3.82) を示した.
6) FatMassは, 一般学生と長距離ランナーとともに第1要因得点と正 (r=0.890~0.916, p<0.05) の, 第3要因得点と負 (r=-0.635~-0.818, p<0.05) の有意な相関関係を認め, 外胚葉の体型は第3要因得点が高くなるほどFat Massが少ないという特徴を示した.また, 中胚葉型を示す第2要因得点と筋量を反映するLBMとの間に有意な相関関係は得られなかった.さらに, 長距離ランナーのLBMは一般学生のものと同水準にあることからトレーニングによるLBMの増大がそれほどみられないことを示した.
以上の結果は, 一流女子長距離ランナーの持久的な走トレーニングがLBMをそれほど増大させないものの, 体脂肪量のなかで皮下脂肪量に大きく影響することを示していた.

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© 日本体力医学会
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