1.健常成人10名を被験者として, 反応時間法による視標追跡運動とH反射法を組み合わせ, 足背屈運動遂行時の前脛骨筋H反射の促通動態を検討した.
2.被験者はこの課題を, (1) RT条件によるステップ運動, (2) RT条件によるランプ運動, (3) Self条件によるステップ運動, (4) Self条件によるランプ運動, の4条件下で行った.
3.RT条件及びSelf条件の両者で, 主動筋である前脛骨筋H反射の促通開始時点 (OPHF) は, 急速なステップ運動時に比して, 緩徐なランプ運動時に延長した.
4.一方, 同じステップ運動を遂行した場合でも, RT条件に比してSelf条件でOPHFは有意に延長した.同様の結果は, ランプ運動時にも得られた.
5.ステップ運動に関し, MTは2名の被験者でSelf条件に比してRT条件で有意な延長がみられ, 1名の被験者で逆の関係がみられた.また, PVは4名の被験者で, RT条件に比してSelf条件で有意な増大が観察された.これらの結果は, Self条件下におけるステップ運動時のOPHFの延長は, 運動速度の変化によるものではないことを示唆する.
6.これらの結果より, 運動開始前における主動筋単シナプス反射の促通は, 運動速度のみならず, 随意運動が行われる状況により修飾を受けることが明らかになった.そして, これらに関与する中枢神経機構について議論した.