体力科学
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聴覚刺激がヒラメ筋H反射に及ぼす影響
古林 俊晃小宮山 伴与志
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1995 年 44 巻 1 号 p. 163-172

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抄録
聴覚刺激がヒラメ筋H反射に及ぼす影響を健常成人10名を対象として検討した.得られた結果は以下の通りである;
1.聴覚刺激 (トーンバースト, 100Hz, TBL音) とヒラメ筋H反射誘発刺激までの時間間隔 (c-t間隔) 約50ms前後より全被験者に促通が観察され, その平均間隔は49.0±8.8msであった.2.この初期の促通効果は, 単位時間当たりの聴覚刺激の数を上げた場合 (トーンバースト, 200Hz, TBH音) , 短縮する傾向がみられ, 単発音 (クリック音) では延長する傾向がみられた.
3.聴覚刺激による最大の促通効果は, c-t間隔100ms前後で得られ (98.0±6.3ms) , その時の促通量は156.1±19.6%であった.
4.最大促通効果が出現した後, c-t間隔200ms程度までに促通は急激に減少した.しかしながら, c-t間隔500msまで, 小さいながら有意な促通が継続的に観察された.
5.経皮的な大脳皮質運動野の磁気刺激を加えた場合, c-t間隔50msでは全被験者で有意な変化は観察されなかった.しかし, c-t間隔100msでは1名の被験者で有意な促通効果が観察された.
6.これらの結果より, 聴覚刺激によるH反射の促通は, 短潜時 (潜時約40ms) の閾値の高い経路, 中潜時 (潜時約60ms) の閾値の低い経路, 並びに200から500msまで継続する促通効果の小さい経路の3つの経路により構成されている可能性が示唆された.
7.本実験では, 聴覚刺激呈示後に単シナプス反射の促通に続く抑制効果は観察されなかった.これは, 急性動物実験で得られた結果とは異なるものであった.
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© 日本体力医学会
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