1995 年 44 巻 2 号 p. 267-278
本研究ではMRIにより非侵襲的に測定した筋容積および筋長をもとに, ヒトの膝伸筋 (KE) および屈筋 (KF) における筋の形態的・構造的特性について検討した.さらに, 等速性膝伸展力および屈曲力および生理学的断面積 (PCSA) より, KEおよびKFのPCSA当りの筋張力の比較を行った.それにより得られた結果を以下に示す.
1.KEおよびKFの筋容積はそれぞれ2178, 1140cm3であり, KEがKFの1.9倍を示した.また, PCSAではそれぞれ292, 111cm2であり, KEはKFの2.6倍であった.KEにおいて最も高値を示したのは外側広筋 (99cm2) で, 最も低値を示したのは大腿直筋 (44cm2) であった.一方, KFにおいて最も高値を示したのは半膜様筋 (44cm2) であり, 最も低値を示したのは縫工筋 (4cm2) であった.
2.KEの筋線維長は7~8cmの範囲にあったのに対して, KFでは6~42cmの範囲であった.KEにおいて最も高値を示したのは中間広筋であり, KFでは縫工筋であった.
3.角速度30, 60, 180, 300, 450deg/secにおける膝伸展力は屈曲力のそれより有意に高値を示した.角速度の増加にともないKEとKFの比 (KE/KF) は低下した.腱張力-腱速度関係においても同様の結果であった.
4.PCSA当りの筋張力-筋線維速度関係ではいずれの速度においてもKFのPCSA当りの筋張力がKEのそれより高値を示した.
5.PCSA当りの筋張力-筋線維速度/筋線維長関係においてもKFはKEより高値を示した.
以上の結果より, KEはPCSAがKFと比較してより大きいことから張力の発揮特性に優れた筋群であり, 一方, KFは筋線維長がKEと比較してより長いことから筋の収縮速度に優れた筋群であることが示された.また, KFのPCSA当りの筋張力はKEのそれと比較して, 筋線維速度あるいは筋節当たりの収縮速度を表わす筋線維速度/筋線維長で検討した場合においても高他を示した.謝辞