体力科学
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リバウンドドロップジャンプにおける着地動作の違いが踏切中のパワーに及ぼす影響
―膝関節角度に着目して―
図子 浩二高松 薫
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1996 年 45 巻 1 号 p. 209-217

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抄録
本研究では, バリスティックな伸張一短縮サイクル運動の遂行能力の指標であるリバウンドドロップジャンプ指数, すなわちRDJindexを大きくするための着地動作について明らかにしようとした.そのために, 陸上競技の男子跳躍選手9名に, 台高0.3mからのリバウンドドロップジャンプを行わせ, 膝関節および足関節の角度変化からみた着地動作の違いがRDJindexに及ぼす影響について検討した.
結果は次の通りであった.
(1) 着地動作の特徴として, 接地の53.6ms前から接地瞬間までに, 膝関節が全屈曲変位の48.6%も屈曲することが認められた.また, この膝関節屈曲率が大きくなるほど, 踏切時間は短くなり, 滞空時間は長くなるために, RDJindexは大きくなることが認められた.これらのことは, RDJindexを大きくするためには, 接地直前に膝関節を瞬時に屈曲する着地動作が重要であることを示すものである.
(2) 踏切動作の一つの特徴として, 膝関節における屈曲から伸展への切り替わりが, 足関節の背屈から底屈への切り替わりよりも早いタイミングで行われていることが認、められた.このタイミングを膝関節の屈曲終了時点と足関節の背屈終了時点の間の時間でみると, 膝関節は足関節よりも13.3ms早く屈曲を終了してキックへと移行していることが認められた.また, (1) で示した膝関節の屈曲率が大きくなるほどこの時間は長くなり, 逆に, 膝関節屈曲率が小さくなるとこの時間は負の値になり, 膝関節の屈曲終了時点と足関節の背屈終了時点のタイミングが逆転することが認められた.これらのことは, 踏切動作において大きな運動エネルギーを短時間に適切に受け止めるためには, 接地直前に膝関節を瞬時に屈曲する着地動作が重要であることを示すものである.
(3) 踏切動作の他の一つの特徴として, 膝関節および足関節ともに踏切中の屈曲変位および背屈変位よりも, キックのための伸展変位および底屈変位が大きくなっていることが認められた.特に, 膝関節では, 屈曲変位に対する伸展変位の割合が310.2%にもなっていた.また, この割合と (1) で示した膝関節の屈曲率との間には有意な相関関係が認められた.これらのことは, 踏切中の膝関節の屈曲範囲を小さくしても, キックのための伸展範囲を大きくするためには, 接地直前に膝関節を瞬時に屈曲する着地動作が重要であることを示すものである.
上述のことから, 接地直前に膝関節を瞬時に屈曲する着地動作は, バリスティックな伸張一短縮サイクル運動の遂行能力の指標であるRDJindexを大きくするための着地動作の一つであることが認められた.
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© 日本体力医学会
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