体力科学
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尾部懸垂によるラットヒラメ筋におけるオシンアイソフォームの分布の変化
奥本 正斉藤 綾子勝田 茂新畑 茂充菊地 邦雄和田 正信
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1997 年 46 巻 3 号 p. 279-287

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抄録
本研究は種々の電気泳動法を用いて, 3週間の尾部懸垂によるラットヒラメ筋におけるミオシン分子の変化を詳細に検討した.得られた結果は以下の通りである.
1) 懸垂群ではコントロール群と比べて, HCIの割合が減少し, これまで正常なヒラメ筋で認められていなかった HCIId, HCIIb が発現した.一方, LC の割合には有意な変化は認められなかった.
2) コントロール群のヒラメ筋では SM と IM の2種類のアイソミオシンが認められた. HCIIa から成っていると考えられる IM の移動速度は, 速筋タイプの筋で認められる HCIIa 由来のアイソミオシンのものより遅かった.
3) 懸垂群では SM と IM の2種類のアイソミオシンが認められたものと, SM と IM の他に FM のアイソミオシンが認めれたものがあった. FM を発現していたラットでは HCIId, HCIIb を発現していたにもかかわらず, FM の移動速度は速筋タイプの筋で認められる FM1-3d, FM1-3b に相当するアイソミオシンのものとは異なっていた.
ピロリン酸電気泳動の移動速度は LC と HC の両方に影響を受けるので, 懸垂によって新たに発現した fast type HC の少なくとも一部はミオシン分子として機能していること, さらにこれまで考えられてきた以上に多種のミオシン分子が存在していることが本研究の結果から示唆された.
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© 日本体力医学会
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