体力科学
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青年期における自覚疲労症状の性差
―自覚の経験と症状に対する重要度の観点から―
小林 秀紹出村 愼一郷司 文男佐藤 進松沢 甚三郎
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1998 年 47 巻 5 号 p. 581-591

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抄録
本研究は青少年期における自覚疲労症状について, 自覚の経験及び重要度評価の観点から疲労症状の内容を踏まえて性差を検討した.学生730名 (男子290名, 女子440名) を対象に調査を実施した.54項目の自覚疲労症状質問項目の回答方法は疲労時に自覚する内容であるか否かの2件法と自覚疲労症状の内容としてどの程度重要であるかに関する7段階評定であった.項目毎に自覚の有無の比率と重要度評価の反応傾向及び平均値について性差を検討した.自覚疲労症状に対する重要度評価の平均値は, 男子において3.9~5.4, 女子において4.5~5.6であった.男女別に自覚の有無の比率を検討した結果, 全ての項目において自覚する確率の高いことが確認された.
自覚の有無及び性差を要因とする重要度の2要因分散分析の結果, 全ての項目において自覚の要因に有意差が認められ, 「自覚する」者の重要度の認識が高かった.一方, 性差の要因に有意差が認められた28項目はいずれも女子に高い値を示し, だるさ, 気力の減退及び焦燥・身体違和感の領域に顕著であった.
同一項目において自覚する者と自覚しない者とでは, 自覚する者の方がより自覚疲労症状を重要視すると推測された.また, 性の要因において有意差の認められた項目内容の多くは, 気力の減退, 焦燥・身体違和感に関する自覚疲労症状であり, 女子の方が男子よりもこれらの症状を重要視すると考えられた.
以上のことから, 自覚疲労症状の性差は, 自覚の経験及び項目内容の捉え方に因るものと推測され, だるさ, 気力の減退及び焦燥・身体違和感においてより強く反映されると考えられた.
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© 日本体力医学会
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