体力科学
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健康関連体力の臨界レベルおよび望ましいレベル
―健康診断結果および日常生活に起因した健康阻害要因に基づく設定―
須藤 美智子三谷 陽子鈴木 政登
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1999 年 48 巻 2 号 p. 265-279

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抄録

本研究では, 握力 (比握力) , 柔軟性および推定VO2maxを健康関連体力 (HRPF) として選択し, 20~59歳の男性3102名を対象に, HRPFの臨界レベル (critical level) および望ましいレベル (desirable level) の設定を試みた.まず, 健康診断結果および運動習慣の有無や喫煙, アルコール飲用など日常生活に起因した健康阻害要因を数値化し, 4種類の健康指標の組み合わせ (HIS-A~D) を作成し, HIS得点0~1点の者を“健康人”, 3~4点以上の者を“不健康人”とした.各体力テストの測定値をcut off値としてROC曲線を描き, “健康人”, “不健康人”を選別するのに最も適したHISの組み合わせの選択を行った.その結果, HIS-Bの組み合わせが選ばれた.HIS-Bにおいてそれぞれ0, 1, 2, 3, 4点以上を示した者の比握力, 柔軟性, VO2maxの平均値をcut off値として感度, 特異度およびYouden指数を算出した.“健康人”を“健康人”として最も多く判別でき (特異度) , しかも診断正確度 (Youden指数) の高いcut off値を各々の体力の臨界レベルとし, 健康人 (HIS-B0~1点) の体力レベルを望ましいレベルとして算出し吟味した結果, 健康の基盤となる体力要素として, 柔軟性, 全身持久性能力が挙げられ, それらの臨界レベルおよび望ましいレベルは次のようであった.
1) 柔軟性の望ましいレベルは, 20~, 30~, 40~, 50~歳代それぞれ7.0, 6.6, 5.2, 4.6cmであり, 臨界レベルは20~39歳代共通で3.2cm, 40~59歳代では1.1cmであった.
2) VO2maxの望ましいレベルは, 20~, 30~, 40~, 50~歳代それぞれ50.2, 46.2, 45.5, 41.5ml/kg・分であり, 臨界レベルは41.8, 40.9, 40.0, 37.8ml/kg・分であった.
以上, 健康に関する体力 (HRPF) のうち柔軟性および推定VO2maxの望ましいレベルと臨界レベルを設定した.健康診断の事後措置として行われる運動指導において健康であるための体力の最低レベル (“臨界レベル”) を維持させるよりも健康や体力の向上を目標とした指導が望ましいことは言うまでもなく, 本研究ではその目標値となる“望ましいレベル”も設定した.

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© 日本体力医学会
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