Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Original Research
Factors Related to Emotional Instability in Spouses of Cancer Patients Receiving Palliative Chemotherapy
Misako HisamatsuYumiko TsutsumiIzumi NishidaHarumi AraiMami UedaHiroko KodamaNaomi Hirata
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2019 Volume 14 Issue 3 Pages 227-235

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Abstract

【目的】本研究は,緩和的化学療法を受けているがん患者の配偶者の気持ちの不安定さに関わる要因を明らかにした.【方法】緩和的化学療法中のがん患者の配偶者を対象に,半構造的面接を行い,質的に分析した.【結果】分析の結果,[病状説明による事態の厳しさの受け止め][経過の見通せなさ][治療手段を失う脅威][療養方針の決断への切迫感][介護による生活にのしかかる負荷][将来展望の崩れ][医療者との意思疎通][患者との率直な対話][他者との関係性]の9の要因が関わることが明らかとなった.【結論】看護者は,これらの要因が家族の気持ちの不安定さに関わっていることを理解して,家族が過度の混乱に陥ることなく,現実的に検討し, 治療効果で得られた患者との貴重な時間を有意義に過ごせるよう支援することが重要である.

緒言

がん化学療法の進展に伴い,手術で取りきることが難しい進行・再発がんに対して緩和的化学療法が実施され,生存年数が延長されている1).しかし,緩和目的の治療では,どのように治療を進めいつ終えるかは,非常に重要な課題2,3)であり,いずれ死別を体験する家族の心理面に配慮したケアが望まれる.

進行・再発がん患者の家族の心理に関する研究では,家族は,治療の不確実性や患者の苦痛,さまざまな喪失を懸念し46)Quality of Life(QOL)が低くなるとされる7).また,終末期では,患者のQOL低下を過剰に捉え8),介護ストレスにより混沌とした心理状態になったり9),医療者との関係や患者の身体症状,喪失の懸念などから動揺したり10,11),望みと異なる現実に直面し耐え難いほどのつらさ1214)を体験するとされる.

一方,緩和的化学療法中の患者の家族を対象とする調査では,家族の54%が患者の進行段階と治療目標について完全な知識を持たず15),進行がんであっても患者の治癒や16),生きる力を支えることを望んでいる17)とされる.そして,患者の状態悪化時にも,病状への不安18)や治療の理解に困難を感じつつも19),情報開示に消極的になり15),現実に直面するつらさと治療への期待の間で気持ちが激しくゆれ動き不安定になるとされている20,21).そして,不安定な気持ちにより心が崩壊しないよう,懸命に感情調整しつつ介護に取り組んでいることが示されている2224).これらから,緩和化学療法中の患者の家族の体験する気持ちの不安定さは,大切な人を失う現実に直面するつらさと,それに対処するために治療効果に過大な期待を寄せることで心の安定を図ろうとする心理から生じる気持ち25)の揺れ動きと解することができ,緩和的化学療法を受ける患者の家族の体験しやすい心理的特徴と推測される.そのため,家族の気持ちの不安定さがどのような要因と関連しているかを明らかにし,気持ちの不安定さに対するケアを検討することは非常に重要であると考える.

実際,がん患者遺族を対象にした調査では,死別前の気持ちの処理と死別への心の準備が死別後の精神的健康へ影響するとされている26,27).緩和的化学療法中のがん患者の家族が死別前に体験する気持ちの不安定さに対するケアが,生前だけでなく死別後の家族の精神的健康にも多大な影響を及ぼすことが十分考えられる.

また,がん患者を看病する家族の中でも,最も精神的影響を受けるのは配偶者とされ,患者の看病や死別体験がどのようなものであったかによっては精神医学的な病的状態を発症する可能性もあるとされる28,29).しかし,配偶者は伴侶としての役割意識が強く,患者に不安や動揺を与えないよう感情表出を抑えたり30),サポートを受けることを躊躇する傾向があることから31),配偶者が体験する気持ちの不安定さは認識されづらいと推測される.

そこで本研究では,緩和的化学療法中のがん患者の配偶者の気持ちの不安定さに関わる要因には,どのようなものがあるのかを明らかにすることにした.

用語の定義

本研究では,緩和的化学療法中のがん患者の配偶者の気持ちの不安定さを,「緩和的化学療法中に体験する現実への直面によるつらさと治療への期待の間でゆれ動き,安定しない状態」とした.

研究方法

対象

緩和的化学療法中のがん患者の配偶者を対象とした.主治医により,入院中の患者の現在の状態が安定し,面接に応じることができると判断された配偶者を紹介いただいた.

期間

データ収集期間は,2013年3月~2015年8月であった.

データ収集方法

半構造的面接を1人につき2~3回行った.データ収集と分析を交互に行いつつ,研究参加者の都合に合わせ2~10カ月の間隔を開けて面接した.面接は,患者の入院中の面会時の前後,また外来治療の付き添い時の待ち時間に実施した.1回目の面接は,「治療をされているなかで,気持ちがゆれ動き安定しないことがありますか.それは,どのようなときになりますか.そして,どのような事柄によってゆれる気持ちが大きくなったり,小さくなったりしますか.」と,気持ちが不安定になる体験とそれに関わる要因について聴取した.2回目以降は,時間経過のなかでの気持ちの変動と,それに関わる要因を聴取した.

面接内容は,同意を得てICレコーダーに録音した.面接中は,参加者の表情や姿勢,話し方などから状態を察しつつ,共感的態度で臨み,研究者の意見は挟まず参加者に影響を及ぼさないよう配慮した.

データの分析方法

データは,質的記述的に分析した32).逐語録を作成し,データを丹念に読み込み,代名詞や指示語などが何を意味するかを確認した.次に,自分流の読み込みによるバイアスを減らすために,語りを一つの意味内容ごと切片化しコード化した.類似するコードをグループ化し,包括する意味をサブカテゴリ名とした.サブカテゴリ間の類似性や差異を比較検討し,カテゴリ抽出を行った.カテゴリ名をつける際には,「気持ちの不安定さ」に関わる要因を明らかにする観点から,気持ちの不安定さの程度を強めたり弱めたりするどちらも表せる要因名となることを考慮して命名した.

分析結果の厳密性の検討

データの信憑性を高めるために,2回目以降の面接時に,前回の内容を提示し確認し修正した.また全分析過程を通して,共同研究者とコード名・サブカテゴリ名・カテゴリ名が発言の意味を反映した適切な表現かを定期的にディスカッションし検討するとともに,質的研究経験者によるスーパービジョンを受けた.

倫理的配慮

本研究は,鹿児島大学疫学研究等倫理委員会(第300号)および鹿児島厚生連病院臨床研究審査委員会,鹿児島共済会南風病院臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.対象者には,自由意思の尊重やプライバシーの保護等について文書と口頭で説明し,同意書に署名を得た.面接はプライバシーの保たれる個室を利用し,面接実施中や終了後は研究参加者の精神状態や気分不良の有無を把握し,問題が生じた場合は直ちに中止し,その後も連絡をとり,対応できる体制で行った.

結果

研究参加者の属性

研究参加者は,14名中11名で,患者との続柄は,夫1名で妻10名だった.辞退理由は「上手く話せる自信がない」「余裕がない」だった.面接時間は,20~100(平均59±25.31)分であった.初回面接時の患者は,入院中で1st line(BFHI),または2nd line(ACDEGJK)の治療中であり,2回目以降の面接では効果の低下を認識したり,治療薬を変更した者もいた(表1).

表1 研究参加者の概要

緩和的化学療法中のがん患者の配偶者の気持ちの不安定さに関わる要因

配偶者の気持ちの不安定さに関わる30サブカテゴリが抽出され,その後9カテゴリが抽出された(表2).以下カテゴリを[ ],サブカテゴリを≪ ≫,発言例を「 」で表す.

[病状説明による事態の厳しさの受け止め]

これは,≪状況の厳しさや予後の説明の受け止め≫≪治療の方向性が見通せない現状の説明の受け止め≫≪疼痛緩和重視への移行の説明の受け止め≫の仕方や,≪説明頻度や説明の詳細さ≫から構成され,病状説明を受けて現在の状態がどの位深刻であると捉えているかを表す.

「お腹の水も溜まってきているので,だんだん厳しくなるようなことは言われましたが.厳しいって言われても,何がどう厳しくなるんでしょう? どこまでのことを考えたらよいのかわかんないんですよね.(H氏)」

[経過の見通せなさ]

これは,≪目では見えない治療効果≫≪副作用による治療延期≫≪転移の発覚≫から構成され,病状がどのようになっていくのか,その成り行きをどの位了解できているのかを表す.

「先生は効いているって検査の結果をみて言われるけど,この1カ月で急に悪くなっている気がして,どんな感じでどうなっていくのか,よくわからないです.(D氏)」

[治療手段を失う脅威]

これは,≪患者のADLの低下≫≪治療効果の低下≫から構成され,治療ができなくなることにどの位脅威をもっているのかを表す.

「この前,検査の値が悪くなっていて,効き目がなくなっているってことを言われて,もうできないってことにでもなったらと思って,私の方が主人より動揺してしまって.(C氏)」

[療養方針の決断への切迫感]

これは,≪治療法の選択を迫られる状況≫≪在宅か転院を決断しなければならない状況≫≪緩和ケア病棟への打診≫から構成され,これからの療養の仕方についてどの位差し迫って決断しなければならないと感じているかを表す.

「病院は3カ月じゃないですか.それで在宅かほかの病院かって言われて,私だけでどう決めたらいいのかわからなくて.もう治療が今まで通りできなくなるんじゃないか,どうなるんだろうって思って.(I氏)」

[介護による生活にのしかかる負荷]

これは,≪介護の重圧による仕事や生活への制約≫≪適切な介護法のわからなさ≫≪経済的負担の積み重なり≫から構成され,自分が介護を行っていく重圧をどの位重く感じているのかを表す.

「介護のことです.もう自分で歩くのもやっとで,トイレに行くのも大変な状態だったんですよ.娘も忙しいから負担はかけられないし.目が離せなくなってからは仕事ももう無理ってなって辞めないといけなくて.(A氏)」

[将来展望の崩れ]

これは,患者の体調悪化に伴い,≪共有の楽しみの失い≫≪叶わなくなった将来の夢≫≪不安定な死別後の生活の想像≫から構成され,あると思い込んでいた患者との将来の生活を失ってしまうことをどの位実感として受け止めているかを表す.

「治療も順調で調子のいいときは,一緒にゴルフの打ちっぱなしも行っていたんですよ.治療のために体調整えるのが精いっぱいでそれもできなくなってからは,なんか先のことを考えて急に落ち着かなくなることがあるんです.(G氏)」

[医療者との意思疎通]

これは,≪医療者の患者や家族への温かな配慮ある関わり≫≪医療者への気兼ねによる疎通の図れなさ≫≪担当医変更≫≪治療やケアへの不満≫から構成され,医療者との情報や気持ちのやりとりがどの程度できていると受け止めているかを表す.

「漠然と,これからどうなるんだろって不安定になりますよ.でも,看護師さんが,奥さん大丈夫ですか~って,気にかけて語る時間を作ってくれるんですよ.これがあるから落ち着けるし,救われた気持ちになります.(E氏)」

[患者との率直な対話]

これは,≪患者と余命や死について率直に対話できないもどかしさ≫≪治療に対する患者の真意のわからなさ≫≪患者の望みを叶えられないでいること≫から構成され,どれだけ患者と心おきなく話ができていると感じているのかを表す.

「本人にこれからどうしたいか聞けたら,どれだけ楽なことか.でも,そんな酷なこと聞けないですよ.(D氏)」

[他者との関係性]

これは,≪身内との意見の食い違い≫≪身内の介護協力の得られなさ≫≪気持ちを理解してくれる他者の存在≫≪周囲との付き合いや距離の置き方≫≪同病者やその家族とのつながり≫から構成され,周囲の人たちとの関係をどのようなものとして受け止めているかを表す.

「娘が治療や主人の世話のことをいろいろ口出ししてくるもんだから.口ばっかりで.最近はもう聞きたくないって思って.たまには,うるさいって,もう黙って!って,けんかになることもあるんです.(A氏)」

表2 緩和的化学療法を受けているがん患者の配偶者の不安定さに関わる要因

考察

本研究では緩和的化学療法中のがん患者の配偶者の気持ちの不安定さに関わる9要因を抽出した.各要因間の関係を検討したところ,「1.病状と治療に関する3要因」「2.配偶者自身の生活に関する3要因」「3. 1., 2.の補強要因」に分類され,図1のように表すことができた.

図1 緩和的化学療法を受けるがん患者の配偶者の気持ちの不安定さに関わる要因の関連

1. 病状と治療に関する要因

病状と治療に関する要因には,[病状説明による事態の厳しさの受け止め][経過の見通せなさ][治療手段を失う脅威]が認められた.この3要因は,配偶者自身ではどうしようもない要因である.家族は,生命維持療法の限界や合併症の理解に困難を感じやすいとされるが33),とくに緩和的化学療法では,抗がん剤の効果により薬の変更や中止になるため,治療状況の理解や予測はさらに困難である.治療に伴うこうした理解の困難さゆえに,医療者の提供する情報や目に見える患者の状態の理解の仕方は曖昧なものとなり,その分病状や治療への楽観的な捉え方や治療効果への過剰な期待も高まりやすいと考える.そして,配偶者に大きな気持ちの不安定さが認められない場合は,病状や今後の経過を現実的に認識できず,過剰に楽観視している可能性があり,最終的に治療効果が得られなくなった際に,患者が生き続ける考えに固執したり,激しい衝撃を受けることもありうる.

したがって,この3要因に関する配偶者の現実的認識の程度と治療効果への期待の程度を的確にアセスメントすることが必要である.そのうえで,医療者と配偶者の理解のずれを確認したり,状況を整理できるような支援を行うことが大切である.そして,配偶者の心理的余裕の程度を見極めつつ必要に応じ情報提供し,徐々に現実的認識に基づいて気持ちを整理し,過剰な期待に固執しないでいられるようにケアすることが求められる.

2. 配偶者自身の生活に関する要因

配偶者自身の生活に関する要因には,[療養方針の決断への切迫感][介護による生活にのしかかる負荷][将来展望の崩れ]が認められた.この3要因は,最終的に配偶者が自分で決断し対応しなければならない要因である.進行がん患者の家族は,未来や損失を懸念しながらも自分の感情を抑え最大限に介護することが報告されている34).また,介護の負担・心理的問題は,家族自身のQOLと密接に関係し3537),とくに配偶者への影響は大きい28,38)とされる.したがって,配偶者の生活に直接関わるこの3要因について,どれだけ切迫して捉えているかにより気持ちの不安定の程度が変化し,切迫して捉えるほどつらさが増すと考えられる.なかでも[療養方針の決断への切迫感]は,患者と人生を歩んできた配偶者にとって,患者の療養に伴う様々な選択を一人で悩み背負うことは,その負担の大きさから気持ちの不安定さの増大は避け難い.

介護者は,支援ネットワーク不足時に病気の進行や緩和への移行に伴う精神的苦悩が増加しやすいとされる28).したがって,患者が安心して療養でき,配偶者が信頼できる支援者とともに介護できる環境整備は,配偶者の気持ちのつらさを軽減し,現実的な状況認識による予期悲嘆を促すとともに,残された患者との貴重な時間に力を注ぐことができる支援にもつながる.そのため,介護度のアップに備え,早めに介護保険制度を利用し介護環境を整えたり,退院後の支援スタッフとの顔合わせを計画・実施するなどの支援が求められる.また,このような現実対処への見通しを図りつつ,家族の感情に寄り添い,将来のことも考えられるような支援が必要である.

3. 1・2の補強要因

配偶者自身の生活に影響する要因として,[患者との率直な対話]や[他者との関係性]が考えられた.配偶者が過剰な治療効果を期待し,現実的認識を回避する状況では,患者との率直な対話を行うことは困難である.加えて,他者との関係性において自分を理解してくれる人がおらず孤立無援感を体験する状況では,ますます困難感が増しつらさを体験すると考えられる.患者と家族の関係満足度は苦痛を調整するが39),患者との向き合い不足は悲嘆の遷延に影響すること40),家族間の意見の不一致が意思決定の障壁となることが報告されている33).また,日本人は家族・患者双方とも感情表出が困難な傾向がある41,42)との指摘がある.緩和的化学療法中の患者と配偶者がお互いの本心を理解し合えない状況や,家族間の関係が上手くいかない状況があると,患者の望む療養,生活の負担軽減,将来展望を築く決断や体制を整えることが困難となり,気持ちの不安定さが助長される.

そこで,配偶者が身内や知人・友人・同病者などの他者との関係をどのように捉えているのかについて自由に語れる機会を設け,自分にとって必要な存在を整理し,介護生活に対応するための力となりうる関係を見極め,自分の身の回りにいる支援者を自覚できるようになることが必要と考える.そして,いつでも自身がつらいときに泣いたり怒りを表出したりしても受け入れてくれる人が身近にいることを感じながら,大切な人を喪失する可能性もあるというつらい現実にも直面し認識できるようになるようなケアが望まれる.

そして,[医療者との意思疎通]の要因は,他の8要因とすべて関連し,配偶者の気持ちの不安定さに影響を及ぼす重要な要因として捉えられた.遺族は医療者からのコミュニケーションによるサポートを肯定的に評価する43)が,医療者へのこだわりやケア評価の低さは悲嘆や後悔に影響する4447)とされている.また,医療者から見放されない安心感が,家族の自己効力感や満足度を高めたり48),患者との絆や看取りの覚悟,死別後の成長に影響するとされる49).これは,配偶者が医療者を信頼できていると,患者の治療や病状,今後の療養生活に対する質問や説明を求めるなどの行動をとりやすくなり,その過程で現実への直面や予期悲嘆を促す医療者からの支援も受けやすくなるためだと考えられる.これらから,どれだけ死別前に患者・家族が医療者との信頼関係をもとにしたケアを受けられるかが非常に重要である.

最も家族の身近でケアする看護者は,配偶者の気持ちの不安定さに関わる「病状と治療に関する3要因」「配偶者自身の生活に関する3要因」やその補強3要因を理解し,配偶者がどれだけ現実的な状況認識と治療効果への期待をもっているかをアセスメントする必要がある.そして,配偶者が直面する状況を現実的に検討し,気持ちの不安定さを落ち着かせ,今できることに目を向けて対処し,緩和的化学療法による治療効果によって得られた患者とのかけがえのない大切な時間を有意義に過ごせるように支援することが重要である.

4. 本研究の限界と今後の課題

本研究は,3施設で実施し,参加者11名中10名が女性であったため,性別による偏りがあった.また,患者の闘病期間や緩和的化学療法期間,治療の種類により,個人差が生じると考えられる.今後,参加者数や調査施設数,条件なども考慮し,理論的飽和を目指した調査を継続していく必要がある.

しかし,今回明らかになった要因は,緩和的化学療法中のがん患者の配偶者であれば,多かれ少なかれ体験すると考えられる.今後は,さらに要因について検討し,それらを配偶者がどの程度感じているのかアセスメントするツールを開発することによって,配偶者の気持ちの不安定さに対するケアにつなげていく必要がある.

結論

緩和的化学療法中のがん患者の配偶者の気持ちの不安定さに関わる要因として,[病状説明による事態の厳しさの受け止め][経過の見通せなさ][治療手段を失う脅威][療養方針の決断への切迫感][介護による生活にのしかかる負荷][将来展望の崩れ][医療者との意思疎通][患者との率直な対話][他者との関係性]が明らかとなった.看護者は,配偶者がこれらの要因についてどの程度現実的に受け止め,治療効果をどのように期待しているかをアセスメントし,その気持ちの不安定さを理解したうえで,現実的な認識と対処を行えるように支援し,治療効果によって得られたかけがえのない時間を有意義に過ごせるように支援することが重要である.

謝辞

本研究の実施にあたり,ご協力いただいた参加者の皆様に深く感謝申し上げます.本研究は,文部科学省科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研究(C)JP15K11663 を受けて実施した.

利益相反

著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

久松,堤,西田は,研究の構想およびデザイン,研究データの収集,分析,解釈,原稿の起草,内容の批判的推敲に貢献;小玉,荒井,植田,平田は,分析,解釈,原稿の内容の批判的推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2019 by Japanese Society for Palliative Medicine
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