日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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赤外光照射下のP700酸化還元レベルの測定による光化学系I周辺の酸化還元レベルの推定
*遠藤 剛佐藤 文彦
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p. 11

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抄録

赤外光(FR)照射下のP700酸化還元レベルは、FRの光強度に依存する電荷分離の速度と、循環的電子伝達経路および光化学系I内の電荷再結合による電子の流入速度とにより決定される。昼間、太陽光を受けている植物葉を暗所に移動し、FRによるP700酸化レベルを測定したところ、夜間の測定に比べ、著しく酸化レベルが低くなっていることを見出した。暗適応した葉に、飽和光を照射することでも、同様なP700酸化レベルの低下が観察されたことから、昼間は太陽光照射により、ストロマが過還元状態となり、循環的電子伝達および電荷再結合が促進されたものと推定した。強光により、FR下のP700酸化レベルが著しく低下した葉を暗適応させることで、FR下の酸化レベルがゆっくり回復(半回復時間が5時間程度)した。すなわち、この変化は可逆的であり光化学系Iの光阻害ではないと推定された。強光照射した無傷葉緑体にDBMIBおよびメチルヴィオロゲンを添加する実験により、循環的電子伝達と電荷再結合の寄与の割合を見積もったところ、両者とも同レベルの寄与であった。また、強光照射後のP700のFR下の酸化レベルの低下は、プラストキノンの非光化学的還元およびNAD(P)H濃度の上昇と関連していた。現在、この現象が両光化学系の量子収率に与える影響について検討している。

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© 2003 日本植物生理学会
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