日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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シロイヌナズナ花茎の伸長に関わる細胞壁関連遺伝子の解析
*井本 桂子横山 隆亮西谷 和彦
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p. 267

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抄録
シロイヌナズナの花茎は1日に数cmという速さで伸長する。花茎上部の伸長量の多い部位の表皮細胞長を測定したところ、数日間で数倍に伸びていた。このように急激に細胞の形が変化するとき、細胞壁の構築・再編成がおきていることがこれまでの研究で明らかにされてきたが、その分子過程は未だ不明である。細胞壁は構造、組成ともに複雑であり、シロイヌナズナでは1,000以上の遺伝子が細胞壁に関連した機能を持っているとゲノム情報から推測された。この複雑な細胞壁の機構を解明するため、私たちの研究室では細胞壁関連遺伝子の中から28ファミリーに属する762遺伝子について遺伝子特異的なオリゴDNAチップを作成した。これを利用して伸長中・伸長後の花茎の遺伝子発現を比較するマイクロアレイ解析を行い、伸長中の花茎で発現量が増加する30程度の細胞壁関連遺伝子が明らかになった。これらの遺伝子は花茎伸長に関わっている可能性がある。一方、伸長後の花茎でも数十の遺伝子の発現が増加しており、伸長終了後の細胞壁構造の変化に関わっている可能性が高い。両方の花茎で常に高い発現レベルを示す遺伝子は少数であった。伸長中、伸長後で異なる遺伝子が働いていることは、花茎が質的に大きく変化していることを示唆するのではないだろうか。現在はリアルタイムRT-PCR法による定量などにより、マイクロアレイの結果について、さらなる解析を進めている。
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© 2003 日本植物生理学会
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