抄録
1,2-diacylglyceryl-3-O-hydroxymetylcholine (DGCC)はハプト藻に普遍的に存在するベタイン脂質のひとつである。我々は、ハプト藻におけるDGCCの生合成経路を明らかにすることを目的に研究を行っている。14C-標識化合物を用いたトレーサー実験により、DGCCの前駆体はエタノールアミンを介したコリンであり、極性基のトリメチルアンモニウム基はコリン経由であることが示唆された。シダやコケ、緑藻などに存在するベタイン脂質である1,2-diacylglyceryl-O-4'-(N,N,N-trimethyl)homoserine (DGTS)の極性基はメチオニンから合成され、脂質に結合した状態で3段階のN-メチル化が進行してトリメチルアンモニウム基が形成されると報告されている。従って、DGCCの極性基はDGTSと全く異なる経路で合成されると考えられる。現在、13C-標識化合物の投与とNMRによる解析を行い、極性基に存在するカルボキシル基の生合成を検討している。