抄録
植物の葉には縦横や表裏の極性が存在する。我々の研究室ではこれまでにそれら極性伸長のメカニズムを明らかにしてきた。が、葉の扁平な構造を構築する分子機構や、サイズの制御機構には、まだは不明な点が多い。今回、葉の扁平性に異常を示すシロイヌナズナのアクティベーションT-DNA挿入株K346を単離して、解析を進めた。K346の植物体は矮性を示し、その葉はくぼみ、長さ方向の伸長がより抑制され、丸みを帯びた形態異常を示す。K346のヘミ接合体はホモ接合体より弱い表現型であった。従って、T-DNA挿入に伴う近傍遺伝子の過剰発現が形態異常の原因であると考えられた。原因遺伝子同定のため、T-DNAの挿入部位を決定したところ、それはAt2g36980とAt2g36990の間であることが分かった。しかし、これらの遺伝子の発現量は、野生型と同様であった。そこで、さらに詳しくこのゲノム領域の塩基配列を検討したところ、アミノ酸53残基をコードし得るORFを発見し、At2g3698xと名付けた。K346においてAt2g3698xは野生型よりも強く発現していたため、現在、At2g3698xを野生株で過剰発現させ、表現型の追試実験を行っている。