抄録
植物は様々なストレスを受けることにより活性酸素を発生させることが知られている。これらのストレスに対抗するため、植物はストレスを受けると活性酸素除去酵素群の発現を誘導する。rcd1-1(Overmyer ら、2000) と同じ遺伝子座上に変異が起こっているパラコート耐性突然変異体 rcd1-2 は活性酸素が関与すると考えられる紫外線の照射や塩ストレスに対して耐性を示したが(日本植物学会第66回大会、2002)、同じく活性酸素発生を伴うオゾンの曝露に対しては感受性を示した。その損傷は活性酸素による一次的な反応ではなく、プログラム細胞死的な反応であった。rcd1 突然変異は劣性なので、rcd1-2 変異体はストレス反応系の負の調節因子の機能が欠損していて常にストレス反応を起こしてしまい、構成的にストレス防御系が働いて活性酸素ストレスに対して耐性を示すと考えられる。また、オゾンの曝露はその作用機構が病原菌の感染に似ているため、rcd1 のオゾン感受性は感染部位の拡大を防ぐためのプログラム細胞死が誤作動することによって起こっていると考えられる。本研究では rcd1-2 変異体の紫外線やオゾン曝露等に対するストレス応答、および原因遺伝子のクローニングとそのシグナル経路について報告する。