日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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オオムギのタペート細胞の発生・分化と高温障害
*安彦 真文阪田 忠高橋 秀幸浅水 恵理香佐藤 修正田畑 哲之木原 誠伊藤 一敏東谷 篤志
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p. 442

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抄録
植物の生殖成長過程は、栄養成長過程にくらべ様々な環境ストレスの影響を受け易く、配偶子形成能の低下や消失につながり不稔となる。私達は、生殖成長が比較的良く同調するオオムギ(はるな二条)を用いて、高温障害の研究を行い、雄蕊分化初期が高温に最も感受性が高く、5日間の高温処理(30℃昼/25℃夜)によって、花粉母細胞形成が停止して完全に不稔となることを報告してきた。今回、この高温障害の発生機構についてより詳細に観察したところ、葯内のタペート層細胞、胞原細胞の初期発生・分化が高温ストレスにより阻害されることを見出した。またこれら細胞の増殖に伴って、遺伝子発現が著しく増加するヒストンH3、H4ファミリー遺伝子などが、高温ストレス下では発現上昇がみられないこと、また60S ribosomal protein遺伝子などの発現量も低下することが明らかになった。そこで一般的に、オオムギの細胞分裂・増殖が高温ストレス(30℃)下で低下するのかを調べる目的で、芽生えと2種類のオオムギ培養細胞を用いて高温ストレス下と最適温度下での培養時の成長曲線とヒストン遺伝子の発現についても比較した。その結果、30℃という温度は、栄養成長においては抑制的に働く温度域ではなく、生殖成長時の特にタペート層細胞、胞原細胞の初期発生・分化において特異的に高温障害を生じることが明らかになった。
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© 2003 日本植物生理学会
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