抄録
本大会における前報(遺伝子発現プロファイルおよび代謝プロファイル解析の統合による栄養欠乏応答機構の解明 I)と同一の植物材料、すなわち、硫黄欠乏および窒素欠乏条件下で約3週間水耕栽培した外見上は正常なシロイヌナズナのロゼット葉および根を用いて代謝物の網羅的解析を行った。超高分解能を持つフーリエ変換イオンサイクロトロン(FT)-MSにより1,000~1,500のマスピークを検出した。得られた精密m/zの値から化合物を同定するプログラムを開発し、KEGG (Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)などのデータベースを用いて化合物の同定・推定を進めている。一方で、未同定のピークであってもフィンガープリントとして利用できるため、グローバルな代謝プロファイルの変化を知ることが可能である。遺伝子発現プロファイルの場合と同じように、代謝物も硫黄欠乏と窒素欠乏とで同様のプロファイルを示すことが判った。またクラスター解析により、硫黄欠乏および窒素欠乏で特異的に蓄積量の変化する化合物(マスピーク)を同定した。
以上のメタボローム解析の結果と、トランスクリプトーム解析の結果(前報)との統合によって明らかになってきたことを報告する。