日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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円石藻によるセレン蓄積機構の速度論的解析
*小幡 年弘新家 弘也白岩 善博
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p. 75

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抄録
 円石藻は細胞表面にCaCO3を主成分とする円石と呼ばれる構造体を持つ単細胞藻類である。そのバイオマス量と炭素固定能の大きさから,海洋でのブルーム発生などその増殖要因の解明が期待されている。我々は円石藻が生育の必須元素としてセレン(Se)を要求することを既に明らかにした。本研究では,円石藻によるセレンの利用機構を明らかにするために, 放射性亜セレン酸(75Se)を用いたSe取り込みの速度論的解析を行い,円石藻Emiliania huxleyiによるSe蓄積能について解析した。
 E. huxleyiは海水濃度(3.2-nM)の亜セレン酸濃度では2400倍にSeを濃縮した。細胞成分を分画し,各画分の放射活性を測定したところ,吸収されたSeのうち50%は低分子画分,20%はタンパク質画分に取り込まれた。総Se吸収の経時変化パターンを解析したところ,速度の異なる2種の成分が含まれていることを見出した。セレン吸収は,75Se添加後30秒以内で定常状態に達する高速のセレン吸収成分と,それ以降に見られるアミノ酸やタンパク質への合成に至る低速の成分が融合したものであった。さらに,セレン吸収に対するATP合成系の阻害実験および速度論的解析の結果などを合わせ,細胞内へのセレン蓄積は能動および受動輸送系による速やかな亜セレン酸の取り込みと,それに続く有機セレン化合物の合成により行われることを明らかにした。
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© 2003 日本植物生理学会
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