抄録
オーキシン応答性転写調節因子であるARF7をコードするNPH4は、オーキシンによる偏差成長で中心的な役割を果たしている。nph4突然変異体はオーキシンに対して非感受性となり、胚軸の屈性、フック形成、葉の偏差成長、側根形成に欠損を持つ。我々はEMS処理した5000粒のnph4-103種子から得た22000個体のM2植物を用いて、子葉と第一葉の下偏成長の回復を指標として抑制突然変異体の一次スクリーニングを行った。さらに胚軸の屈性の回復を指標として二次スクリーニングを行った結果、nph4-103の表現型であるロゼット葉の下偏成長と胚軸の屈性について回復した抑制突然変異体を7ライン単離し、そのうち3ラインについて詳しい解析を行った。この3ラインはいずれも劣性突然変異で、それぞれ異なる表現型を示した。このうちの1つは、葉が野生型よりも強い上偏成長を示し、胚軸の屈地性は野生型の半分程度まで回復したが、屈光性は異常なままだった。もう一つは矮性で、濃緑色で丸い葉をもち、暗所芽生えの胚軸は短く脱黄化の表現型を示した。胚軸の屈地性と屈光性は刺激開始後4時間までは野生型と同様の反応を示した。最後の一つも半矮性で濃緑色で丸い葉を持ち、屈地性は野生型の半分程度回復したが、屈光性は回復していなかった。また、いずれの抑制突然変異体においても側根形成の欠損に回復は見られなかった。