抄録
イネ(ニッポンバレ)Tos17挿入株ライブラリー(ミュータントパネル)を材料として、クロロフィル蛍光による電子伝達系に関わる突然変異株のスクリーニングを行った。ニッポンバレTos17挿入株ライブラリーの一部(NC株約9600株およびND株1100株)から各株3個体ずつを播種した。二次元クロロフィル蛍光解析装置を用い、発芽後、2週間目の幼苗を材料として、高蛍光変異株を選抜した(一次選抜)。ついで、パルス変調蛍光計にて詳細に蛍光誘導パターンを解析し、それらを分類した(二次選抜)。
約10700株のうち、一次選抜で103株の変異株が選抜された。2次選抜では、これらを、high-Fo (36株)、no-quenching (24株)、slow-quenching(43株)の3タイプに分類した。High-Foタイプは、葉緑体遺伝子発現の異常またはP680酸化側の突然変異の可能性が高い。No-quenchingタイプは、P680の還元側の電子伝達系の変異の可能性が高く、量子収率が極めて低いため、その後致死になると考えられる。Slow-quenchingタイプは、キノンプールよりさらに還元側の変異もしくはnon-photochemical quenchingに関わる変異であると推定される。これらのうち、興味深い変異株について、原因遺伝子の解析を進めている。