抄録
SULTR1;1とSULTR1;2はシロイヌナズナの根の表皮と皮層で発現する高親和型硫酸イオントランスポーター遺伝子である。SULTR1;2はSULTR1;1よりmRNA発現量が高いが、両遺伝子とも硫黄欠乏に応答しmRNA発現が誘導される。SULTR1;1とSULTR1;2のT-DNA挿入二重変異体は、低濃度の硫酸イオンを吸収できず生育が顕著に阻害された。SULTR1;1 T-DNA挿入変異体の硫酸イオン吸収活性は、高硫酸条件では野生型植物と同程度だが、低硫酸条件では野生型植物の約60%であった。SULTR1;2 T-DNA挿入変異体では、高硫酸・低硫酸条件の両方で硫酸イオン吸収量が野生型植物の約25%に減少した。よって、高硫酸条件では主にSULTR1;2が硫酸イオン吸収を担うと考えられる。また、低硫酸条件でSULTR1;1 T-DNA挿入変異体とSULTR1;2 T-DNA挿入変異体の硫酸イオン吸収活性の和が野生型の活性より低いことから、硫黄欠乏時にはSULTR1;1とSULTR1;2が相乗的に機能し、根における硫酸イオン吸収を効率的に仲介すると予想される。