抄録
CAF-1は3つのサブユニット(p150、p60、p48)から構成されており、複製やDNA修復後に合成されたDNAにヒストンを運ぶ機能を担い、クロマチン再構築において極めて重要な働きをしている。高等植物のシロイヌナズナにおいてもCAF-1(FAS1、FAS2、MSI1)が同定され、この複合体がin vitroにおいてクロマチンアッセンブリー機能を有することが示されている。しかしながら、高等植物においてはCAF-1と様々なDNA修復系との関係について未解明である。そこで両者の関係を明らかにする端緒として、シロイヌナズナの2種のCAF-1変異株(fas1とfas2)を用い、CAF-1とDNA二重鎖切断修復系の一つである相同組み換え(HR)との関係を解析した。その結果、CAF-1変異株は野生株と比べγ線に対して高感受性を示した。また、HRにおいて中心的役割を担い、DNA二重鎖切断処理(γ線照射)により転写が誘導されるAtRAD51遺伝子の発現が、CAF-1変異株においてはDNA損傷処理をしなくても著しく誘導されていた。さらに染色体内HR頻度解析の結果、CAF-1変異株においては野生株と比較して約40倍高まっていることが明らかになった。