抄録
本講演では,ゲノム情報や遺伝子機能の解析への,コンピュータグラフィックス,特に可視化技術の応用について述べる.遺伝子関連情報は一般に極めて大規模であり,計算機を用いて有効な情報だけを効率よく取り出すことが求められている.この目的のために,人工知能的な情報検索技術や画像認識技術などが,数多く研究されている.これらは,いわば人間の能力を計算機に代行させ,より高速に行うことを目指したものである.しかしながら,特に認識能力に関しては,人間には容易でも計算機には困難なケースが数多くある.
そこで我々は,コンピュータグラフィックスならびに可視化技術を用いて,計算機と人間との分業によって有効情報を効率よく得ることを目指している.計算機によって単純かつ大量のデータ処理を行って何らかの画像を生成し,これを人間に提示することにより,人間のもつ高度な視覚認識能力によって情報を得るのである.
一例として,植物の生長過程を撮影した動画像に基づく,生長の可視化手法を紹介する.この例では,計算機による認識処理を行うことなく,単純な画像処理の組み合わせだけで実現している.可視化結果を人間が見ることで,植物の生長曲線を容易に読み取ることができる.この他,大量情報のクラスタリング結果の表示方法や,物体をイラスト的に描画することで情報をより的確に伝達する手法なども,紹介する.