抄録
ほぼ70年前、Chailakhyan(1936)は花成はホルモンによって引き起こされるとした。今日フロリゲン説と呼ばれるものである。本シンポジウムはフロリゲン説70年を記念し、フロリゲン研究のこれまでを振り返り、今後を展望する。
始めに、フロリゲンの定義について議論したい。フロリゲン説は、今日、様々に解釈され、その混乱が研究の障害となっているように思える。しかし、少なくとも、葉から茎頂に何らかの情報が伝達されるということは、共通理解として認識されていると見なしてよいだろう。我々が知りたいのは、この情報が何であるかということであり、ここでは、この情報をフロリゲンと呼ぶこととしたい。
この70年間、生理学的なフロリゲン探索は様々な成果をあげてきたが、フロリゲン同定には至っていない。一方、最近、分子遺伝学は花成研究でも急速に進展してきたが、多くの場合、フロリゲン説とは関係なく進んできた。そのため、生理学的研究と分子遺伝学的研究は接点を持たないままに推移し、やがて、フロリゲン説は忘れられるようになった感がある。しかし、最近、葉で発現する遺伝子の翻訳産物が茎頂に輸送される可能性を示唆する研究が見られるようになってきた。これは、葉から茎頂に情報が伝達されるという考えにおいてフロリゲン説と一致する。フロリゲン研究は新しい時代を迎えたと言えよう。