抄録
セリン・スレオニンタンパク質リン酸化酵素をコードするシロイヌナズナPINOID(PID)遺伝子は、オーキシン極性輸送を制御する。pid 変異体では花序が棒状を示すことから、PID は腋芽形成に関わっていると考えられる。我々は、イネにおいて腋芽形成とオーキシンの関係を明らかにするため、イネPID相同遺伝子を単離し、その機能の解析を行っている。
イネゲノム中でPIDと相同性を持つ遺伝子を検索し、それらについてリン酸化酵素ドメインのアミノ酸配列をもとに系統樹を作成した。最も相同性の高い遺伝子はPIDと全長アミノ酸配列で54%の相同性を示し、これをOsPIDとした。RT-PCRによりOsPIDは茎頂と根で発現することがわかった。さらにin situ hybridization を行ったところ、OsPIDは葉腋すなわち腋芽を形成する領域で発現していた。OsPIDはプロモーター領域にオーキシン応答配列をもっており、その発現はオーキシンによって誘導された。さらに、OsPID過剰発現体では根が形成されなかった。この表現型はオーキシン存在下で育成した植物に類似していることから、過剰発現体はオーキシンに対する感受性が高くなっていると考えられた。以上の結果から、OsPIDはオーキシンシグナル伝達に関わっており、腋芽形成にも関わっていることが示唆された。