抄録
オオムギはAl毒性に対して高い感受性を示す種であるが、Al耐性において大きな品種間差があることが知られている。また我々はオオムギのAl耐性能は根から分泌されるクエン酸の量と強い相関があることを報告している。この有機酸分泌機構を明らかにするためにAl耐性種のムラサキモチと感受性種のモレックスを用いたマイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析を行った。解析に用いたRNAは0または5μMのAl処理を6時間行った根端1cmから抽出し、検出にはaffymetrix Barley1 genechipを用いた。Alにより2倍以上の発現誘導を示した遺伝子はムラサキモチ、モレックスでそれぞれ149、211遺伝子であり、また1/2以下に減少した遺伝子はそれぞれ90、122遺伝子であった。誘導された遺伝子の多くはストレス応答に関与しており、ムラサキモチではタンパク質分解の関連遺伝子の増加が、モレックスにおいてはABCトランスポーターの誘導が特徴的であった。有機酸代謝に関連した遺伝子の変動はモレックスにおいてイソクエン酸リアーゼの増加が認められたのみであった。またムラサキモチにおいてはAlにより誘導される輸送体タンパク質は認められなかったが、複数の輸送体タンパク質がモレックスに対し恒常的に高い発現を示していた。現在これらの遺伝子のAlによる発現誘導について詳細な解析を進めている。