日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

シロイヌナズナを用いた光合成電子伝達の低温適応機構の解明
*高見 常明小林 善親鹿内 利治
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 415

詳細
抄録
二酸化炭素固定効率の低下する低温において植物が吸収する光は過剰になる。そのため植物は、カロチノイド、アントシアニンなどの植物色素の蓄積や、集光性タンパク質の組成を変化させることで低温での光環境に適応している。また光化学系IIでは過剰な光エネルギーを安全に熱として捨てている(NPQ)。そこで、本研究では光合成電子伝達の低温適応機構の解明を目的とし、シロイヌナズナの遺伝学の導入を試みた。連続低温下(10℃)と、低温と常温(23℃)の温度変動を持たせた2種類の処理条件を設定し、一週間低温処理を行った。低温処理したシロイヌナズナ野生株の光化学系IIの最大活性であるFv/Fmを室温で測定したところ、処理による影響はほとんどなく、これらの低温処理が光阻害を起こさない程度のものであることが分かった。また、NPQの光強度依存性は10℃一定の条件下で生育させた野生株では変化はみられなかった。しかし温度変動がある条件下で生育させた野生株ではNPQが弱光域から誘導されるようになり、一定温度で生育させた植物とは異なる適応戦略をとることが明らかになった。現在、温度変動に適応できない突然変異体の単離を行っている。また、光化学系Iサイクリック電子伝達活性を欠く突然変異体を用いて低温処理を行った結果についても報告する。
著者関連情報
© 2006 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top