抄録
マメ科植物は根粒を形成して根粒菌と共生し、窒素固定を行う。近年、ミヤコグサ等のマメ科モデル植物の共生変異体を用いた分子遺伝学的解析により、根粒菌との共生初期過程の分子機構が明らかになりつつある。しかしながら、その後の細胞内共生成立から窒素固定活性発現、維持の機構についてはほとんど解明されていない。そこで我々は、窒素固定系成立、維持に関与する植物側の因子を明らかにする目的で、新規のミヤコグサ有効根粒形成不全変異体(Fix-変異体)Ljsym102に着目し、その解析を行った。Ljsym102変異体は、窒素栄養制限下で根粒菌を感染させると根粒を形成するが、地上部および根部ともに野性型に比べ生長が抑制され、窒素肥料含有培土への移植により生育が回復する。根粒の窒素固定活性(アセチレン還元活性)はきわめて低く、根粒切片の顕微鏡観察で、根粒組織は野性型同様に発達していたが、感染細胞内では顆粒化等早期老化の兆候が見られたことなどから、本変異体では、根粒の機能不全が窒素不足を引き起こしたと考えられた。しかしながら、KNO3存在下の栽培試験で生育は完全には回復しなかったことから、Ljsym102は窒素固定活性ばかりではなく、生長自体にも問題が生じている変異体であると思われた。そこで、我々は本変異体の原因遺伝子を明らかにするため、マップベースクローニングを行った。本発表ではこれらの結果について報告する。