抄録
塩ストレスとブラシノステロイド(BR)がミヤコグサの根粒着生に及ぼす影響を調べた。培地に加えた塩化ナトリウム(NaCl)は、根粒着生とミヤコグサ実生の生育を濃度依存的に抑制した。すなわち、100~150 mMのNaCl存在下では根粒はできたが着生数が減少した。また、根粒着生に伴う実生の生育促進は制限され、レグヘモグロビン由来の赤色を呈する根粒に代わり白色のものが多くなった。続いて、細菌数を比較したところ、赤に比べ白い根粒中で有意に増えていた。これらの結果から着生した白い根粒は正常に機能していないと考えられた。さらにNaCl濃度を上げる(175 mM以上)と根粒がほとんど着生しなくなった。しかし、この塩濃度の下でも根粒菌が増殖できたことから根粒着生の抑制は宿主であるミヤコグサが塩ストレスを受けたためと推察される。一方、塩を含まない培地に加えた活性型BR・ブラシノライド(BL; 10-9~10-5 M)とBR合成阻害剤・ブラシナゾール(10-7~10-5 M)は、ミヤコグサ実生の生育を変化させたが根粒着生には全く影響しなかった。しかし、100~150 mMのNaCl存在下では、BLは根粒着生を有意に阻害した。上記の結果に基づき、本発表では塩ストレスが誘導する根粒着生の阻害とそれに対するBRの相乗作用について議論する。