日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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システム生物学アプローチによるイネサイトゾル型グルタミン合成酵素遺伝子OsGS1;1の機能解析
*草野 都田渕 真由美福島 敦史Celine Diaz小林 誠林 尚美山谷 知行斉藤 和季
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p. 0311

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抄録
水田で生育するイネは、アンモニアを主要な窒素源として利用する。グルタミン合成酵素(GS)は、アンモニアをグルタミンに変換する反応を触媒する。イネにおいてサイトゾル型GS(GS1)をコードする遺伝子は3種類存在するが、遺伝子破壊株解析により、OsGS1;1がイネの正常な生長および登熟に重要な機能を有することが判明した。しかしながら、本遺伝子欠損株が示す顕著な生育阻害と窒素同化および代謝制御機構に関わるOsGS1;1の機能は未だ明らかにされていない。そこで我々は本遺伝子欠損株を用いて代謝物および転写物プロファイリングを行い、本問題の解明を試みた。ガスクロマトグラフ―飛行時間型質量分析計による代謝物プロファイリングの結果から、アンモニア添加水耕液で栽培した欠損株は葉身内の可溶性糖類が異常蓄積するのに対し、アミノ酸類の蓄積量は著しく低下することが判明した。また、根においては葉身で観測されたプロファイルとは全く異なる代謝プロファイルを示した。代謝物相関解析により、欠損株が新たに獲得した代謝ネットワークを発見した。更に、転写物プロファイリングの結果を代謝変化、代謝物相関の変化と統合することにより、OsGS1;1が葉身内で糖類とアミノ酸の量的バランスを保つことで地上部の正常な生育を維持するのに重要であること、地下部においてもアンモニア同化に対して重要かつ特異的な機能を有することを明らかにした。
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© 2009 日本植物生理学会
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