抄録
タデ科ギシギシ属エゾノギシギシRumex obtusifolius L.は世界各地の田畑や牧草地などに多く見られる多年生草本であり、駆除が困難な強害雑草として知られている。日本では、明治期に北海道にて移入が確認された後、数十年の間にほぼ全国に分布を拡大し、特に問題視されている。
タデ科ギシギシ属の植物は、シュウ酸含有量が高い。シュウ酸の過剰摂取は動物にとって有害である一方で、植物においてシュウ酸は重要な役割を果たしていると考えられる。というのは、シュウ酸は防御分子である過酸化水素合成の基質の1つであるため、傷害などのストレス応答との関与が推測されている。また、シュウ酸を根圏へ放出することで土壌中の金属イオンとキレートを形成し、金属イオンの毒性を打ち消すという報告がある。
本研究ではエゾノギシギシのシュウ酸代謝を明らかにするため、CE-MSを用いてギシギシ属植物の葉の代謝物量を測定し種間比較を行った。その結果、エゾノギシギシは他種よりもシュウ酸を高蓄積した。また、シュウ酸を高蓄積する植物ほどアミノ酸を多く含む傾向が見られた。さらに、地上部を切除し暗条件で育成したエゾノギシギシの葉および茎のメタボローム解析を行った。その結果、暗条件では茎の主要代謝物であるクエン酸が葉のシュウ酸の高蓄積に関与する可能性が示された。