抄録
動物細胞のダイナミンは,エンドサイトーシスにおいて細胞膜から内側に出芽した状態のクラスリン被覆ピットの根元に重合し,膜を縊り切って小胞化するGTPaseタンパク質である.シロイヌナズナゲノム中にはこのダイナミンと類似の構造を持つダイナミン様タンパク質(以下DRP: Dynamin-Related Protein)がDRP1~DRP6までの6種類存在する.このうちDRP2ファミリーに属するDRP2AとDRP2Bは前述の動物細胞のダイナミンと最も近いドメイン構造を持つことが報告されているが,その機能は明らかでない.本研究では,これらDRP2が植物細胞のエンドサイトーシスにおけるクラスリン被覆小胞形成に関与するか否かを調査するため,斜照明蛍光顕微鏡と蛍光タンパク質を利用し,細胞膜直近におけるDRP2Bの局在をクラスリンと比較した.その結果,シロイヌナズナ培養細胞の細胞膜直近においてDRP2Bはクラスリンと共局在することが明らかとなった.さらにその挙動を経時的に観察すると,DRP2Bがクラスリン重合部位に出現し,次第に蓄積し、その後消失していく様子が明らかとなった.これらの結果から,DRP2はエンドサイトーシス時のクラスリン被覆小胞形成に関与する可能性が高いと考えられる.