日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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アラビドプシスの根において長距離シグナルと局所的シグナルに制御される鉄吸収遺伝子の網羅的解析
*榎本 裕介橋田 慎之介庄子 和博島田 浩章吉原 利一後藤 文之
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p. 0441

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抄録
鉄欠乏状態においてAtFRO2の発現は、主に植物全体から根へ送られる促進的な長距離シグナルによって制御されている。さらにAtFRO2の発現はAtbHLH38/AtFIT複合体に誘導されることが知られている。しかし、AtbHLH38の発現は、葉を切除した状態でも鉄欠乏応答ができることから根における局所的シグナルに制御されると考えられる。以上のことから、我々はAtFITがAtbHLH38と相互作用して形成する複合体によってAtFRO2の発現が長距離シグナルで制御されていると推定した。
これらの制御機構に関わる遺伝子を明らかにするために、我々はアラビドプシスの根における応答についてマイクロアレイ解析を行った。葉を全て切除して24時間後またはそのまま葉を残した場合の、鉄充分状態に対する鉄欠乏状態での発現量を調べた。その結果、葉を残した状態で鉄欠乏によって有意に2倍以上に誘導される遺伝子は79個あり、それらの中で葉を切除した状態でも鉄欠乏に応答したものが43個みつかった。一方、葉の切除によって鉄欠乏状態で発現が促進されなくなった遺伝子は36個同定された。前者の43個は局所的シグナルによって鉄欠乏に応答できる遺伝子であり、後者の36個は長距離シグナルの影響を受ける遺伝子であると考えられる。
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© 2009 日本植物生理学会
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