抄録
アサガオは光条件に敏感な短日植物で、幼植物期の茎頂は暗処理後2時間で成長相が生殖成長へと移行する。我々は、アサガオ茎頂における花成誘導初期の成長制御機構の解明に向け、茎頂の機能維持に関わる遺伝子の単離を試みた。
その結果、茎頂の機能維持について中心的な役割を果たすWUSCHEL(WUS)遺伝子とSHOOTMERISTEMLESS(STM)遺伝子及び花成初期に発現が誘導されるFRUITFUL(FUL)遺伝子オーソログ(それぞれPnWUS1、PnSTM1、PnFUL1)が単離された。茎頂内における発現をin situ hybridizationによって解析した結果、3遺伝子ともに他植物オーソログ遺伝子と類似した発現様式を示した。 また、近年WUS遺伝子とSTM遺伝子についても花形態形成への関与について解析が進められていることから、アサガオでも花成誘導初期の茎頂と花器官における3遺伝子の発現を解析した。その結果、PnFUL1遺伝子は早くも暗処理終了時に対照区の10倍以上の蓄積が見られ、花器官では萼片を中心に広く全体に蓄積していた。一方、PnWUS1とPnSTM1遺伝子は花成誘導初期の茎頂内における蓄積量に大きな変化は見られなかった。これらの結果について、他植物で報告されている花成誘導と花器官形成のメカニズムと比較・考察した。