日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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太陽紫外線がイネの生育・収量に及ぼす影響評価:宮城・鹿児島での野外環境試験
*山岸 朋香寺西 美佳一谷 勝之佐藤 雅志日出間 純
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p. 0874

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抄録
これまで、1)紫外線(UVB)の増加は、イネの生育障害や玄米の小型化、玄米タンパク質の増加などの悪影響を及ぼすこと、2)イネは品種間でUVB感受性に差があり、その主要因はUVB誘発シクロブタンピリミジン二量体(CPD)を修復する光回復酵素の活性の違いにあること、3)CPD光回復酵素の酵素活性の差は、第十染色体上のCPD光回復酵素遺伝子の変異に起因していることなどを、環境調節室での実験や野外圃場試験を通して明らかにしてきた。UVBは太陽光に含まれており、現在の自然環境下においても植物はUVBによって生育障害を受けている可能性が十分に考えられる。そこで、太陽UVBによる植物への生育傷害の実態を実験的に明らかにすることを目的として、UVB抵抗性を示し光回復酵素活性の高い遺伝子型を有する日本型イネコシヒカリと、コシヒカリの第十染色体をUVB感受性を示し酵素活性の低い遺伝子型を有するインド型品種カサラスで置換したSL229系統を材料とし、宮城県(06~08年)、ならびに鹿児島県(08年)で野外圃場試験を試みた。その結果、コシヒカリとの比較においてSL229系統で玄米の小型化や花粉の稔性の低下が観察され、特に、太陽光に含まれるUVB量がより多い鹿児島県では、玄米の小型化がより顕著に観察された。これらの結果から、現在の太陽光に含まれるUVBによって、植物は障害を受けていることが強く示唆された。
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© 2009 日本植物生理学会
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