抄録
形質転換植物を用いた物質生産では、目的タンパク質の安定的な生産が必要である。これまでに、味覚修飾タンパク質であるミラクリンをコードする遺伝子をCaMV35Sプロモーターとnosターミネーターを使ってトマトに導入し、導入遺伝子が世代を越えて安定発現する形質転換トマトの作出に成功している。現在、ミラクリン遺伝子導入トマトを用いてミラクリンの高効率かつ安定的な生産法の研究を行っている。ミラクリン遺伝子導入トマトを異なる光強度の下で栽培したところ、ミラクリンの含量およびミラクリン遺伝子の発現量が強光下で減少した。ミラクリン遺伝子の転写終結点を調べたところ、強光下では本来の転写終結点で転写が終結していないmRNAの割合が多くなっていた。これらの結果から、nosターミネーターの転写を終結する能力は光強度により変動し、目的タンパク質の蓄積量に影響を及ぼすと考察した。そこで、新たなターミネーターを選定し、形質転換体の作成を行い、その新規ターミネーターの強光下で転写を終結する能力を現在検討している。
