抄録
私たちは、アンチオーキシン活性があるとして知られているPCIBが、オーキシンによる遺伝子発現誘導やAUX/IAAタンパク質の分解促進を阻害すること、また、シロイヌナズナをPCIBを含む培地で育成したときに、オーキシン情報伝達の変異体は、PCIBによる主根の生長阻害が野生型に比べ軽減されているが、オーキシン輸送変異体は野生型と同様の反応を示すことを見いだした。そこで、オーキシン作用にかかわる新規遺伝子を明らかにすることを目的として、PCIB存在下で主根の生長が抑制されない突然変異体のスクリーニングをおこなった。その結果、atcul1、tir1といった既知遺伝子座の変異体に加え、aar1、aar3といった新規変異体の取得に成功した。これらの変異体は合成オーキシン2,4-Dに対しても感受性の低下がみられた。それぞれの原因遺伝子SMAP1、AAR3は、動物ゲノムにも類似遺伝子が存在し、AAR3は、RUB E3リガーゼであるDCN-1遺伝子と類似していた。またaxr1との二重変異体の解析などからSMAP1もRUB修飾にかかわる新規制御因子であることが示唆された。以上の結果からPCIBがオーキシン情報伝達機構に関連した未知因子の解明に有効な道具となることが示された。