日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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月山の黄色雪から単離したOchromonas smithii O. itoi の形態学的、生理学的特徴とそれらの系統上の位置について
*原 慶明設楽 智文
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p. S0070

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抄録
日本海に面した豪雪地帯の残雪期に、標高千メートル前後のブナ林周縁に雪上藻類が出現する。極域や標高の高い山岳地帯の雪上藻類と共通する種類も多いが、この地域以外からは確認されていない種類もいる。Ochromonas smithii O. itoiは原記載(Fukushima、1968)以来、日本以外からの報告はない。両種は単細胞遊泳型の黄金色藻類(Chrysophyceae)で、表面に1から4の棘状突起を持つ特徴的な細胞形態で、現地では5月下旬から7月中旬に、積雪表面がパッチ状に黄色に色づく(彩雪)ほど増殖する。これを研究室に持ち帰り顕微鏡観察すると15℃前後の室内ではすぐに不動となり、破裂してしまう。そのため、以降の作業は全て4℃の低温実験室で行なうことになる。雪上藻類の研究は極域や標高の高い山岳地帯に出現する藻類を対象に行われ、年間を通して雪や氷河が存在するため、「雪上藻類がどこから来て、どのように増殖し、どこへ消えていくか?」という疑問に触れることは少なく、従って、これら藻類の生活環に関する調査・研究は僅少である。我々の調査地である月山や鳥海山は8月~9月にかけて、積雪が地表から完全に消失するため、それらの生活環と生理、生態学的特性の関係解明を端緒として、さらに「氷河期や全球凍結など地史的な寒冷環境を如何に生残・進化したか?」の視点に立ち雪上藻類の研究を進めている。
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© 2009 日本植物生理学会
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