日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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北極圏スピッツベルゲン島ニーオルスンにおける高等植物の光合成特性
*村岡 裕由野田 響内田 雅己
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p. S0072

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抄録
極域の陸上生態系は,地球規模での環境変動がもたらす影響が顕著である場所として,また,生態系の一次遷移の生じる場所として注目されている。高緯度北極のツンドラ生態系には維管束植物が広く分布しており,その生理生態学的特性と微気象環境との関係や植生の分布様式は,生態系の成立過程をなすと同時に,生態系のCO2吸収量を規定する。本講演では,スバールバル諸島ニーオルスン(北緯78.5度,東経11.5度)のツンドラ生態系を代表する維管束植物3種(キョクチヤナギSalix polaris,チョウノスケソウDryas octopetala,ムラサキユキノシタSaxifraga oppositifolia)の光合成特性とバイオマス分布について紹介する。葉の最大光合成速度(光飽和,大気CO2濃度370ppm)はSalixが約124 nmolCO2/g/s,Dryasが約58,Saxifragaが約24だった。種ごとの光合成能の違いは,種ごとの葉の窒素含量の違いを反映していた。落葉性のSalixの光合成能は顕著な葉齢依存性を示した。当地の若い植生では蘚苔類やSaxifragaが優占し,植生の発達に伴いSalixの優占度およびバイオマスが増す。こうした種組成とバイオマスの変化,および上述の光合成特性を考慮することにより,氷河後退域の植生および土壌の発達と一次生産量の空間分布様式の関係を探ることができる。
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© 2009 日本植物生理学会
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