日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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acl5-1変異の茎伸長欠損を抑圧するリボソームタンパク質の変異
*懸樋 潤一河野 恵理本瀬 宏康高橋 卓
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p. 0150

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抄録
ポリアミンの一種であるサーモスペルミンの合成欠損株acaulis5acl5)は、茎の著しい矮化を示す。サーモスペルミンと茎の伸長の関係について調べるため、この変異を抑圧し、茎の伸長を回復させる抑圧変異、sac変異の解析を行った。これまでの研究により、SAC51はbHLH型の転写因子、SAC52はリボソームタンパク質L10をコードしていることが分かった。SAC51 mRNAはメインORFの5’側に5つの小さなupstream ORF(uORF)を持つ。サーモスペルミン非存在下では、このuORFの1つにリボソームが捕捉され、SAC51の翻訳量が減少した結果、著しい茎の伸長欠損が引き起こされたと予想される。一方、SAC52は、リボソームタンパク質の変異によるリボソームの構造変化によって、uORFに捕捉されなくなった可能性がある。さらに、半優性を示すsac53-dsac56-dの原因遺伝子を同定したところ、SAC53は活性化型Cキナーゼ受容体RACK1を、SAC56はリボソームタンパク質L4をコードしていた。これらもリボソームを構成する要素である。しかし、sac52-dsac56-dSAC51の翻訳を促進する一方、sac53-dでは翻訳促進効果は見られなかった結果から、sac53-dsac52-dsac56-dは異なる機構を介してacl5の茎伸長欠損を回復すると推測される。
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© 2010 日本植物生理学会
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